ブラジルの次世代のポップスター
Embed from Getty Imagesブラジルの次世代のポップスター、Luísa Sonza(ルイーザ・ソンザ)。
2023年8月にリリースされた3枚目アルバム、”Escândalo Íntimo“(エスカンダロ・インチモ)が大ヒットしており、Spotify Brazilでは、リリース当日のストリーミング数で史上最多記録を更新しました。
この記事では、ルイーザソンザのバイオグラフィーを2022年までたどりながら、ヒットした代表曲や、彼女の魅力を知ることができる曲を紹介していきます。
なお、2023年の3枚目アルバムについては、こちらの記事をご覧ください。
YouTubeからデビュー
Luísa Sonza(ルイーザ・ソンザ)は、ブラジル南部リオグランデ・ド・スル出身で、1998年7月18日に生まれました。
子供のころから歌の才能を見出されていたようで、近所のお祭りや結婚式、ミサなどで歌っていたそうです。
やがてアコースティック・ギターを片手に弾き語りするようになり、有名な曲のカバーを自撮りし、インスタグラムやYouTubeにアップするようになります。
その頃の動画です↓
今のルイーザとは雰囲気も音楽性も全然違って、驚かされますよね。デビュー前の2016年の映像で、The Beatles(ビートルズ)の名曲、”Blackbird“(ブラックバード)のカバーです。
ルイーザは影響を受けたアーティストとして、イギリスのThe Beatles、ブラジルの「ロックの女王」Rita Lee(ヒタ・リー)、そしてアメリカのRihanna(リアーナ)の名前を挙げており、そういった音楽的なルーツを知る上でも貴重な映像だと思います。
ここに貼ったようなYouTubeの動画が注目され、2017年にはユニバーサル・ミュージック・ブラジルと契約し、デビューを果たしました。
“Olhos Castanhos“(オーリョス・カスターニョス、「茶色の瞳」)は、デビュー直後の音源で、EP “Luísa Sonza“の収録曲です。当時の恋人で、のちに結婚することになる、超人気ユーチューバーのWhindersson Nunes(ウィンデルソン・ヌニス)に捧げられた曲だと言われています。
個人的な印象として、この頃の音源を聴くかぎりでは、ルイーザは「第二のSandy(サンディ)」のようなポップスターになる可能性もあったのではないか、という気がします。
でも、ルイーザが歩んだのは、Anitta(アニッタ)のようなセクシー路線でした。そして、セクシーなポップスの新星として大ヒットしていきます。
路線変更
現在、ルイーザ・ソンザといえば、あからさまに性的な歌詞と、セクシーなダンスやミュージックビデオで有名です。この路線変更を決定づけたのが、次に紹介する曲のヒットでした。
2018年にリリースされたこのシングル、”Devagarinho“(ジヴァガリーニョ)は、Spotify BrazilでTop50に入る快進撃を見せます。
そして、ちょうど同じ年、ルイーザ・ソンザは先ほども名前が出たWhindersson Nunes(ウィンデルソン・ヌニス)と結婚(2020年離婚)。公私ともにブラジル中の注目を集めることになりました。
1枚目アルバム、”Pandora”
2019年には、1枚目のスタジオ・アルバム、”Pandora“(パンドラ)をリリース。このアルバムから2曲を紹介します。
“Garupa”
“Garupa“(ガルーパ)は、ドラァグ・クイーンの歌手、Pabllo Vittar(パブロ・ヴィター)とのコラボ曲です。
当時はブラジルにパブロ旋風がふいており(個人的な印象です)、そのパブロが参加した曲ということで、私もこの曲からルイーザ・ソンザに注目するようになりました。
“Bomba Relógio”
ポップスのシンガーソングライター、Vitão(ヴィタゥン)とのコラボ曲。
ルイーザとヴィタゥンは、このコラボからしばらくして、2020年ごろ一時的に恋愛関係になります。
アーティスト同士の恋って、そこから新しい歌が生まれたりするので、リスナーとしても気になりますよね。ところが、ルイーザとヴィタゥンの恋愛関係は、ネット上であまり歓迎されなかったようです。
もともとルイーザは、人気ユーチューバーとの結婚が「カネ目当て」だとバッシングされていたようで、そんな中での離婚、そしてかつてのコラボ相手と恋は、SNSで激しく批判されることになりました。こうしたバッシングから受けた心の傷が、ルイーザの音楽制作にも影響を与えていくことになったそうです。
シングル、”BRABA”の大ヒット
パンデミックの2020年3月にリリースされたシングル曲、”Braba“(ブラーバ)は、Spotifyブラジルで、ポップスとしては異例の1位を獲得し、大ヒットしました。
ストリッパーに扮したセクシーなミュージックビデオやダンス、そして性的な歌詞。音楽的には、ブレガファンキやファンキBPB150を取り込んでおり、2020年のブラジルポップスを象徴する一曲でもあります。ルイーザのキャリアの中でも、特に重要な一曲です。
2枚目アルバム、”Doce 22″
2021年7月には、2枚目アルバム“Doce 22“(ドーシ・ヴィンチドイス)をリリース。このアルバムにまつわる曲を、4曲紹介します。
“MODO TURBO”
“MODO TURBO“(モード・トゥルボ)は、ブラジルのトップスターAnitta(アニッタ)と、先ほども出てきた大人気のドラァグ・クイーンPabllo Vittar(パブロ・ヴィター)をゲストにむかえた超豪華コラボ曲。
ミュージックビデオも必見です。3人が廃墟のゲームセンターでVRのゲームの世界に入り、トゥワーク・バトル(?)をする、というストーリーで、VRの世界観は日本をイメージしていると思われます。
“melhor sozinha :-)-:”
アルバム”Doce 22“の収録曲を、セルタネージョ歌手Marília Mendonça(マリリア・メンドンサ)とデュエットした音源も必聴です。
人気絶頂だったマリリア・メンドンサは、2021年11月5日、飛行機事故で命を落としました。その数か月前にリリースされたこの音源は、マリリアメンドンサという歌手の懐の深さ、そしてルイーザの歌の器用さがよく表れている、すばらしいコラボだと思います。
“ANACONDA o ~~~”
次のミュージックビデオには、蛇が出てきます。苦手な方は閲覧注意です!
“Doce 22“収録曲。MVでルイーザは大量の蛇とたわむれています──。
こういう「蛇モノ」って、ブリトニー(VMAs 2001)やアニッタ(“Veneno”のMV)も通ってきた道とはいえ、見ていて心配で、「嫌なことは嫌、って断って!」と思ってしまいますよね──。その一方で、こういった仕事も完璧にこなす「プロとしての根性」も感じ、本当に尊敬します。
“Lud Session”
”Doce22”の曲を演奏しているライブ音源として、Ludmilla(ルジミーラ)とコラボした2022年の”Lud Session“(ルジ・セッション)も良いです。
“Lud Session“は、ルジミーラがゲストをむかえ、バラードの「歌合戦」みたいなことをやる企画。
ルイーザはこのライブセッションで、アルバム”Doce 22″収録の”penhasco.”(ペニャスコ)と”CAFÉ DA MANHÓ(カフェ・ダ・マニャン)を披露しています。歌唱力もカリスマ性も圧倒的で、今のところ”Lud Session”の最高傑作ではないかと思います。
ルイーザの魅力を知るための、シングル曲
ここまで、時系列でルイーザソンザの主要な音源を紹介してきました。
ここからは、リリース年が前後しますが、ルイーザの「幅の広さ」が分かるシングル曲を見ていきましょう。
“Não Vai Embora”
2020年5月リリースされた”Não Vai Embora“(ナン・ヴァイ・エンボーラ)は、Dilsinho(ジウシーニョ)とコラボした曲です。ジャンルでいうと、「パゴージ・ホマンチコ」という「サンバ風ポップス」に分類されます。しっとりした曲を歌うルイーザの歌声を堪能できる良曲です。
“Atenção”
2021年5月リリースされた”Atenção“(アテンサゥン)は、Pedro Sampaio(ペドロ・サンパイオ)とのコラボ。とにかくテンションをアゲていくスタイルの、最高のポップチューンです。ハリウッド映画『チャーリーとチョコレート工場』に着想を得たMVも面白いですよね。ルイーザのキッチュでキュートな衣装と「尻芸」も強烈です。そしてこの曲、ちょっとボリウッドっぽいと思うのは私だけでしょうか。
“Coração Cigano”
2022年8月リリースの”Coração Cigano“(コラソン・シガーノ)では、セルタネージョ(ブラジルのカントリー・ミュージック)のスター歌手、Luan Santana(ルアン・サンタナ)とのデュエットが聴けます。
ルアン・サンタナは、共演者泣かせでもあります。オペラ歌手のような声量とカリスマ性があり、共演者がかすんでしまうんですよね。実際、デビューして間もないルイーザがコラボしたときの音源を聴くと、曲自体の構成やミックスのせいもあって、ルイーザの存在感がちょっと薄く感じてしまいます↓
このふたつの音源と比べてみると、ルイーザ・ソンザが、この数年でいかに歌唱力を磨いてきたか、よく分かるのではないでしょうか。
ルイーザの魅力
ここまでお読みいただきありがとうございます。2022年までのルイーザの軌跡をたどる記事も、これで終わりです。2023年の3枚目アルバムについては、キャリアの中でも特に重要なすばらしい作品なので、別記事にまとめました。是非あわせてお読みいただけると幸いです。
最後に、ルイーザ・ソンザの魅力を語らせてください!
ルイーザの魅力は、一言で表現すると、「さらけだしている感じ」です。セクシーな衣装やダンスだけでなく、歌やパフォーマンスで内側のエネルギーをすべて外側に開放させているような、隠すところのない、全部ぶちまけている感じ。そんな「さらけだし感」、「爆発している感」が、他のアーティストと比べても圧倒的だと思います。
過激すぎるとも言われるダンスやMVも、その「ふりきった感じ」が見ていて爽快です。蛇だろうがなんだろうが、なんでも受け入れて撮影をやりきる度胸もすごいですよね。そういった修羅場の場数を踏むことで、表現力にも磨きがかかっているのかもしれません。もちろん、あまり無理はしてほしくないですが──。
歳を重ねるごとに、ますますパワーアップしているルイーザソンザ。2023年12月には、Netflixでドキュメンタリー番組が公開予定です。日本でも視聴できるようになることを願っています。