Ludmillaのパゴージ作品まとめ

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Ludmillaのパゴージを今聴くべき理由

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ブラジルの歌手、Ludmilla(ルジミーラ)が今、サンバで注目されています。

2022年のラテングラミーで、アルバム“Numanice #2”(ヌマナイシ・ドイス)「最優秀サンバ・パゴーヂ・アルバム」(Best Samba/Pagode Album)部門を受賞。ブラジルでは「ポップスのアーティスト」として有名な彼女が、アメリカの音楽賞で、まさかの「サンバのトップ・アーティスト」として認定される形となりました。

Ludmillaのやっている「サンバ」とは、正確にいうと「パゴージ」です。パゴージとは、サンバの一種で、パーティーで演奏される即興セッションにルーツをもつ、ポップなサンバを指します(詳しくはこちらの記事をどうぞ)。

サンバとかパゴージとか、よく分からない…。」と思われたかもしれません。もしそう思ったのなら、なおさらブラジルの今のポップスとして、Ludmillaのパゴージがオススメです。

この記事を書いている私も、音楽の趣味の土台にJ-Popや英米圏の音楽があるので、硬派なサンバは敷居が高く感じていました。そんな私にとって、Ludmillaの音楽は、「親しみやすさ」ブラジルの伝統が同居した、まさに「ブラジルらしいポップス」と呼べるもの。ふだんブラジル音楽を聴かない人にこそ、ぜひ聴いてほしい作品です。

そこでこの記事では、Ludmillaのサンバ・パゴージ作品を全部まとめて紹介します。また、「どの作品から聴こうか?」と迷っている人に向けて、「まずはこの作品から!」とオススメする順番も紹介します。

「Numanice」とは?

ルジミーラのライブアルバム『ヌマナイシ・アオ・ヴィーヴォ』のジャケット

ディスコグラフィーをたどる前に、Ludmillaのパゴージ作品につけられているタイトル、「Numanice」という言葉について解説しておきます。

読み方は「ヌマナイス」、あるいはポルトガル語風に発音すれば「ヌマナイシ」で、ポルトガル語と英語の造語です。

英語に訳せば「in-a-nice」、日本語に無理やり訳せば「ナイスで」といった意味になっています

Ludmillaのディスコグラフィーを眺めると、「Numanice」というタイトルが連続し、どれがどれだか分かりにくいかもしれません。ただ、「Numanice」と銘打っていればパゴージ作品だと分かるので、その意味では分かりやすいです。

補足 発音と表記について

「ヌマナイス」か「ヌマナイシ」か、ということについて、ちょっと補足しておきます。ブラジルの公用語であるポルトガル語の、発音に関する話です。

たとえば「shock」という英単語がありますよね。これを日本人は「ショック」と読み、最後に母音「u」を付け足して発音しがちです。同じような感じで、ブラジル人はこれを「ショッキ」と読み、最後に母音「i」を付け足して発音します。

なので、Numaniceは、英語風に発音すれば「ヌマナイス」ポルトガル語風に発音すれば「ヌマナイシ」となります。ライブ音源でも「ヌマナーイシー!」と語尾を伸ばしているのが聴こえるはずです。

このブログでは、現地の発音を尊重し、「ヌマナイシ」という表記で統一することにします。

プロデューサーRafael Castilhol

アレンジが鍵となっている作品群でもあるので、プロデューサーの話も最初にしておきましょう。Numaniceの全作は、Rafael Castilholという人物がプロデューサーをつとめています。

彼はもともとパゴージの演奏家で、トップ・アーティストのうしろで打楽器やキーボードを弾いていたようです。演奏家として申し分ないキャリアがありながら、プロデューサーとしてはまだそこまで知られていませんでした。そんな彼がNumaniceシリーズをプロデュースしており、どれもすばらしい作品に仕上がっています。

なお、Numaniceシリーズのライブでキーボードを弾いているのが、Rafael Castilholです。

Ludmillaのパゴーヂ作品のディスコグラフィー

【2020年】Numanice以前

Ludmillaがパゴージに取り組み始めたのは2020年のことです。この2020年、Numaniceシリーズの前に、その伏線としてサンバの曲をいくつか出しているので、見ておきましょう。

“Beija-me”

2020年1月、サンバの名曲”Beija-me“(ベイジャ・ミ)をカバー。この曲は、1940年代のサンバを代表する歌手Cyro Monteiro(シロ・モンテイロ)の曲で、2006年にはパゴージの大御所Zeca Pagodinho(ゼカ・パゴジーニョ)によってカバーされています。ダンスポップ風にアレンジされたこのトラックが、Ludmillaのサンバ進出の第一歩となりました。

“A boba foi eu”と”Faz uma loucura por mim”

2020年3月には、Spotify限定シングルを2曲リリース。

A boba foi eu“(ア・ボーバ・フォイ・エウ)は、Ludmillaのアルバム”Hello Mundo“(ハロー・ムンド)の曲です。元はR&B調の曲でしたが、パゴージ風にアレンジされ、清涼感あふれる曲に生まれ変わりました。

Faz uma loucura por mim“(ファス・ウマ・ロウクーラ・ポル・ミン)は、サンバの大御所、Alcione(アルシオーネ)の曲のカバーです。

【2020年】EP Numanice

こうした伏線のあと、2020年4月、”EP Numanice“(エーペー・ヌマナイシ)がリリースされました。

全5曲のうち、”Amor difícil“(アモール・ジフィシウ)、”Cheiro bom do seu cabelo“(シェイロ・ボン・ド・セウ・カベーロ)、”Tô de boa“(ト・ジ・ボア)はLudmillaが作曲しています。

Te amar demais“(チ・アモール・デマイス)は、Sodréというアーティストの2018年の曲。”Um pôr do sol na praia“(ウン・ポル・ド・ソウ・ナ・プラヤ)は、日本でも人気のシンガーソングライターSilva(シルヴァ)が作曲し、Ludmillaとコラボした2019年の曲で、パゴージ・アレンジによって軽快に仕上がっています。

【2021年】Numanice (Ao Vivo)

EP発表の翌年2021年の1月には、ライブアルバム”Numanice (Ao Vivo)“(ヌマナイシ・アオ・ヴィーヴォ)をリリースしています。”Ao Vivo”というのは「ライブ版」という意味です。パゴージというジャンルでは、スタジオ音源よりライブ音源のほうが優れている場合が多く、この作品もその例にもれない傑作となりました。

曲目は、”EP Numanice”の全曲に加えて新曲もあり、Ludmillaの持ち歌のパゴージ風アレンジ、そして他のパゴージ・アーティストの曲も演奏されています。

Youtubeで公開されているライブ映像も必見です。リオデジャネイロの絶景を背後に屋外で演奏されており、動画を見ているだけで、リオの潮風を感じるような作品に仕上がっています。

私としても特にオススメの作品なので、詳しくはまた別の記事にまとめました。

【2021年】Numanice Lud Session

2021年の12月には、ドラァグ・クイーンのアーティストGloria Groove(グロリア・グルーヴ)とのコラボでライブ音源をリリースしています。

“Lud Session”(ルジ・セッション)は、LudmillaがNumaniceと並行して取り組んでいたコラボ企画で、毎回ゲストを迎え、メドレー形式でバラード系の持ち歌を歌うというもの。2021年はXamã(シャマン)Gloria Groove(グロリア・グルーヴ)、そして2022年にはLuísa Sonza(ルイーザ・ソンザ)とのLud Sessionが実現し、音源とともに動画も公開されてきました。

そんな中で生まれた”Numanice Lud Session“(ヌマナイシ・ルジ・セッション)は、NumaniceシリーズとLud Sessionシリーズのハイブリット企画といえます。Gloria GrooveとのLud Sessionの曲目が、そのままパゴージのアレンジでライブ演奏されました。

ちなみにGloria Grooveは、お母さんがパゴージ・グループRaça Negra(ハッサ・ネグラ)でバックコーラスをしていたことでも知られており、少なからずパゴーヂと縁のあるアーティストです。

メドレーで歌われている曲をリストアップしておきます。

  • “Modo Avião” Ludmillaのアルバム“A Danada Sou Eu”の曲
  • “A Tua Voz” Gloria GrooveのEP “Affair”の曲
  • “700 Por Hora” Ludmillaのアルバム“Hello Mundo”の曲
  • “Radar” Gloria GrooveのEP “Affair”の曲
  • “A Música Mais Triste do Ano” Luis Linsという若手アーティストの2017年の曲

【2022年】Numanice #2

Numanice #2“(ヌマナイシ・ドイス)はLudmillaの4枚目アルバムで、2022年1月にリリースされました。

10曲すべて、作曲にLudmillaがたずさわったオリジナル曲です。誰もが楽しめるポップな音楽でありながら、アメリカのR&Bやパゴージ・ホマンチコを取り込んでいて、ジャンルを横断し新しいものを作り出している作品だと思います。

中でも、同性婚したパートナーに捧げられた歌、”Maldivas“(マウジーヴァス)は際立っており、音楽配信で桁違いの再生回数を記録、Multishow(ムウチショウ)賞でも「今年のヒット」(Hit do Ano)部門を受賞しています(詳しくはこちらの記事をどうぞ)。

そしてこのアルバムで、Ludmillaはラテングラミーを受賞することになりました。

【2022年】Numanice #2 (Ao Vivo)

“Numanice #2 (Ao Vivo)”(ヌマナイシ・ドイス・アオ・ヴィーヴォ)は、2022年の8月にリリースされたライブ・アルバムです。

ライブはリオデジャネイロのムゼウ・ド・アマニャン(Museu do Amanhã、明日の博物館)で行われ、映像はYoutubeで視聴可能となっています。

このライブアルバムで特に注目されたのは、Marília Mendonça(マリリア・メンドンサ)とコラボしたオリジナル曲、”Insônia“(インソニア)でした。Marília Mendonça(マリリア・メンドンサ)は2021年11月、人気絶頂期に飛行機の墜落事故で命を落とし、世間に衝撃を与えたセルタネージョ(ブラジルのカントリー・ミュージック)の歌手で、”Insônia”は生前の録音をもとに収録されています。

どれから聴く?

ここまで、Numaniceシリーズをすべてたどってきました。同じタイトルの音源がたくさんあって、どれから聴こうか迷ってしまったかもしれません。

そこで最後に、私の主観にもとづいて、「まずはこれから!」というオススメの順番を紹介します。

1番目 Numanice Ao Vivo

まずは、”Numanice Ao Vivo“のライブ動画のどれかひとつをYoutubeで視聴するのがオススメです。リオの絶景、そしてセッションの躍動感を、ぜひ体験してみてください。アルバムの構成も良く、最後は「これぞパゴージ!」という楽しい演奏で締められています↓

LUDMILLA – Vai Lá/Que Mulher (Nega Danada)/Cadê Ioiô/Alguém Me Avisou Thiaguinho e Vou Pro Sereno

2番目 Numanice #2

次に聴いてみてほしいのは、”Numanice #2“です。全曲がオリジナルなので、Ludmillaの音楽がどういったものなのか、分かりやすいという意味でオススメです。ラテングラミーを受賞したのも、この作品でした。

3番目 Numanice #2 Ao Vivo

スタジオ版を聴いた後、ライブ版”Numanice #2 Ao Vivo“と聴き比べてみてください。ライブ版のほうが演奏に躍動感があり、音源として私は好きです。歌声も最高です↓

Ludmilla – Eu Estive Aqui | Numanice #2 Ao Vivo

4番目 EP Numanice

すべてはこの作品から始まりました。ちなみに”EP Numanice“は、新型コロナウィルスのパンデミックが始まったばかりの時にリリースされています。個人的な話ですが、先行きが見えない中で聴いたこの作品は、ブラジルから爽やかな風を届けてくれているようで、今でも私にとって特別な一枚になっています。

最後に

2020年から始まったLudmillaのパゴージ・プロジェクト、Numanice。その軌跡を2022年までたどってきました。普段ブラジルの音楽を聴かない人にも自信をもってオススメできる、「ブラジルらしいポップス」が、Numaniceシリーズには詰まっています。音源だけでなく、ライブ映像も必見です。

なお、Ludmillaのバイオグラフィーと代表曲をまとめた記事もあります。こちらもあわせてご覧ください。

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