Ludmilla(ルジミーラ、ルドミラ)とは、誰?

ルヂミーラ アーティスト紹介
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Ludmillaとは、誰?

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ブラジルを代表する黒人女性歌手

今のブラジル・ポップスを語る上で欠かすことのできないトップ・アーティスト、Ludmilla(ルジミーラ、ルドミラ)ファンキ(Funk)というブラジル独自のラップ・ミュージックで有名になり、リオデジャネイロのオリンピック開会式にも出演し、まさに「国を代表する歌手」のひとりとなりました。最近では、パゴージ(Pagode)というサンバの一種にも取り組んでおり、ラテングラミーも受賞しています。

また、バイセクシュアルであることを公表しており、同性婚したことでも有名です。黒人であり、であり、セクシャル・マイノリティーである、という属性をかかえながら、ポップスターとしてシーンの第一線で活躍してきました。

この記事では、そんなLudmillaのバイオグラフィー代表曲とともに紹介します。

なお、Ludmillaという名前は、ブラジルのポルトガル語で「ルジミーラ」(ルヂミーラ)と読みます。ただ、ブラジル国外のアーティストともコラボしており、英語やスペイン語では「ルドミラ」と呼ばれます。愛称は、Ludルジ」です。

注: このブログでは、以前は「ルドミラ」という表記で統一していましたが、現地での発音を重んじ、「ルジミーラ」で統一することにしました。

初めてLudmillaを聴くなら、まずこの曲

「初めてLudmillaを聴く」という方には、この曲がオススメです↓

Ludmilla “Rainha da Favela”

2020年リリースの“Rainha da Favela”(ハイニャ・ダ・ファヴェーラ)。タイトルは直訳すると「ファベーラの女王」。「ファベーラ」とは、ブラジルのスラム街のことで、このミュージック・ビデオ自体、すべてファベーラで撮影されました。

この曲は、音楽的にはファンキ(Funk)というジャンルに分類されます。スペルは同じ「Funk」ですが、ブラジルのファンキは、アメリカのファンクとは全くの別物です。リオデジャネイロファヴェーラで生まれたストリート・カルチャーで、「バイレファンキ」という名称でも知られており、簡単に説明するなら「ブラジル独自のヒップホップ」ともいえるでしょう。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ファンキは、歌詞が「お下品」な場合が多いです。”Rainha da Favela”の歌詞も、一言でまとめると、「私のおしりに注目」。ダンスも「おしり」中心です。このあたりは「ブラジル・ポップスあるある」なのですが、ルジミーラのMVやステージは、性的な感じ以上に独特の「強さ」がみなぎっているのが特徴だと思います。実際、私もこの「強さ」、「カッコよさ」に惹かれ、ルジミーラのファンをやっています。

“Rainha da Favela”のMVは、出演者たちにも要注目です。薄暗い部屋でLudmillaと絡んでいるのが、同性婚したパートナーのダンサー、Brunna Gonçalves(ブルナ・ゴンサウヴェス)

そして屋外パーティーの場面では、Tati Quebra Barraco(タチ・ケブラ・バハーコ)Valesca Popozuda(ヴァレスカ・ポポズーダ)MC Katia(エミセー・カチャ)MC Carol(エミセー・カロウ)といったファンキの女性アーティストたちがカメオ出演しています。4人とも、男性中心社会のファンキ界にあって、女性としてフロンティアを開拓してきた超重要人物たちです。

まさに「ファベーラの女王(Rainha da Favela)」の名がふさわしいLudmilla。ここからは、彼女のバイオグラフィーを時系列でたどっていきましょう。

バイオグラフィー

「ブラジルのビヨンセ」、Youtubeからデビュー

Ludmillaは、1995年4月24日リオ・デ・ジャネイロ州ドゥケ・デ・カシアスで、母子家庭に生まれ育ちました。父親は刑務所で服役しており、子供時代から苦労が多かったのではないかと思います。

そんな彼女の人生を変えたのが、世界の歌姫Beyoncé(ビヨンセ)でした。ある日、偶然DVDで見たビヨンセに一目ぼれし、熱狂的なファンとなった彼女は、「ブラジルのビヨンセ」となるべく動き出します。

2012年、MC Beyoncé(エミセー・ビヨンセ)の名前で活動を開始。自身で作詞作曲をしたファンキの曲、“Fala Mal de Mim”(ファラ・マウ・ヂ・ミン)の動画がYouTubeにアップされると、一躍有名になりました。

MC Beyonce – Fala mal de mim (Clipe Oficial HD )

2014年にはWarner Music Brazilと契約。メジャー・デビューと同時に、本名のLudmillaと名乗るようになります

デビューアルバムは“Hoje”(オージ)。同名のシングル曲“Hoje”(オージ)は、今もライブで定番の一曲です。

LUDMILLA – Hoje (Clipe Oficial)

MVはコント仕立てで、理想の男性を製造しようとするマッド・サイエンティストが演じられています。途中、「忠実、理解がある、文句を言わない」という条件で、が出てくるところが最高ですよね。この頃のLudmillaは、まだ19歳です。

2016年 大ヒット! オリンピック開会式への出演

2016年には、2枚目のアルバム、“A Danada Sou Eu”(ア・ダナダ・ソウ・エウ)をリリース。このアルバムは、アメリカでラテングラミー賞にもノミネートされました。

Ludmilla “Cheguei”

アルバム”A Danada Sou Eu”より、2016年の大ヒット曲“Cheguei”(シェゲイ)。ブリトニーの”Oops I Did It Again”を連想させるMVですが、いろいろな人種、体型、ジェンダー、ファッションのダンサーが入り乱れて踊るところは、とても近年のブラジルらしいと思います。

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同じく2016年、リオデジャネイロで開催されたオリンピックの開会式に出演。90年代のファンキの名曲“Rap da Felicidade”(ハッピ・ダ・フェリシダージ)を歌いました。

Ludmilla – “Rap Da Felicidade” – Rio 2016 Opening Ceremony | Music Mondays

2017年~ 世界へ!

オリンピックが転機となったのか、2017年以降のLudmillaは、海外アーティストとのコラボを加速させていきました。リリースされた曲は山ほどあるのですが、2019年の活躍には目覚ましいものがあります。特に重要な4曲を紹介しておきます。

Anitta with Ludmilla and Snoop Dogg feat. Papatinho “Onda Diferente”

“Onda Diferente”(オンダ・ジフェレンチ)は、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)Anitta(アニッタ)とのコラボで、Anittaのアルバム”Kisses”に収録されています。

Anittaは、まぎれもなく今のブラジル・ポップスを代表する歌手です。そんなAnittaとLudmillaの豪華共演に、Snoop Doggまでついてくるという、とてもぜいたくな一曲となっています。

ただ、曲のクレジットをめぐってAnittaとLudmillaが揉め、かねてより比較され、対立をあおられてきた二人の関係が悪化。それぞれのファンが泥仕合をするという事態が起きてしまったようです。

Silva e Ludmilla “Um Pôr do Sol na Praia”

スローテンポで郷愁の漂う曲、“Um Pôr do Sol na Praia”(ウン・ポフ・ド・ソウ・ナ・プラヤ)は、ブラジルのシンガーソングライター、Silva(シルヴァ)の曲です。Ludmillaがソロで歌うパゴージ・ヴァージョンもあり、EP”Numanice”や、“Numanice (Ao Vivo)”に収録されています。

MC Lan, Skrillex, TroyBoi feat. Ludmilla e Ty Dolla $ign “Malokera”

“Malokera”(マロケラ)は、アメリカのSkrillex(スクリレックス)、イギリスのTroyBoi(トロイボーイ)を迎えた野心的な一曲。ラッパーとして、ブラジルのMC Lan(エミセー・ラン)、アメリカのTy Dolla $ign(タイ・ダラー・サイン)も参加しています。MC Lanも強烈ですが、Ludmillaもかっこよく、中毒性のある一曲です。

なお、KondZilla(コンジラ)というのは、ファンキのレコードレーベルです。YoutubeチャンネルのCanal KondZilla(カナウ・コンジラ)は、ブラジルで最大の音楽チャンネルとなっています(詳しくはこちらの記事)。

同じく2019年には、ライブアルバムの“Hello Mundo”(ハロー・ムンド)を発表し、同名のスタジオアルバムもリリースしています。Anitta(アニッタ)Leo Santana(レオ・サンタナ)Jão(ジャウン)Ferrugem(フェフージェン)Simone & Simaria(シモーニ・イ・シマリア)とのコラボも含まれ、超豪華な内容です。

LUDMILLA e Anitta – Favela Chegou – DVD Hello Mundo (Ao Vivo)

“Hello Mundo”(ハロー・ムンド)の一曲で、Anitta(アニッタ)とコラボした“Favela Chegou”(ファベーラ・シェゴウ)。この曲も、ライブで定番となっています。

LUDMILLA – Verdinha (Official Music Video)

“Verdinha”(ヴェルジーニャ)は、2019年の年末に発表され、2020年の音楽賞Prêmio Multishow(ムウチショウ賞)で「今年の歌」部門を受賞した一曲です。

マリファナ栽培を「野菜」(Verdinha)栽培だと嘘をつく、コミカル(?)な曲で、作曲はLudmilla、プロデュースは、Major Lazer(メジャー・レイザー)Walshy Fire(ウォルシー・ファイヤー)と、ドミニカ共和国のTopo La Maskara(トポ・ラ・マスカラ)が担当しています。

バイセクシュアルであることの公表、同性婚

2019年は、私生活においてもLudmillaにとって特別な一年になりました。

Ludmillaは、サッカー選手や実業家など、いろいろな男性と浮名を流してきました。そんな彼女が、ダンサーのBrunna Gonçalves(ブルナ・ゴンサウヴェス)と付き合っていることをインタビューで明らかにします。ブルナは当時まだ無名で、Ludmillaのバックダンサーをやっていました。

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このニュースがきっかけとなり、Ludmillaはバイセクシュアルであることを公表。

今となってはバイセクシュアルとして有名なブラジル人アーティストはたくさんいますし、当時すでにAnittaが公言していました。

しかしながら、実際に女同士でつきあっていることを公表するのは、ハードルが高いことだったようです。一連の公表の結果、Ludmillaはいくつかのスポンサー契約を打ち切られてしまったと語っています(くわしくはこちらの外部記事をどうぞ)。

それでもブルナと共に生きることを選んだ彼女は、2019年の年末に同性婚を果たします。

パゴーヂ 新たなステージへ

そして翌年の2020年、EP”Numanice”ヌマナイシ)がリリースされました。このEPを皮切りに、”Numanice”というタイトルのもと、立て続けにパゴージ作品がリリースされていくことになります。このシリーズの全容は、次の記事をご覧ください。

“Numanice”という言葉は、ポルトガル語と英語の造語で、英語にすれば”in-a-nice”。日本語に無理やり訳せば「ナイスで」といった感じの意味です。このタイトルの作品は全曲がパゴージで、サンバ特有の楽器とリズムを用いつつ、親しみやすいポップな作品に仕上がっています。

EP “Numanice”は、ファンキで有名になり、国際的に実力派歌手として活躍するLudmillaが、改めて「ブラジルらしさ」を求め、自分のルーツに回帰したような内容です。また、このEPでは、6曲のうち4曲をLudmillaが作曲しているのも見逃せません。まさに、Ludmillaのキャリアの転換点となった作品だと言えるでしょう。

2021年には、ライブ版の“Numanice (Ao Vivo)”(ヌマナイシ・アオ・ヴィーヴォ)を発表。パンデミックのため無観客で行われたライブは、リオ・デ・ジャネイロの観光名所で撮影されました。EP”Numanice”の全曲に、新曲も加えた内容になっています。私としても、Numaniceシリーズの中で一番オススメの作品です。全曲を解説した記事も書いたので、よければご一読ください。

Ludmilla “Não É Por Maldade” part. Bruno Cardoso, Sorriso Maroto

アルバム“Numanice (Ao Vivo)”に収録されている曲、“Não É Por Maldade”(ナン・エ・ポル・マウダージ)は、パゴージ・バンドSorriso Maroto(ソヒーゾ・マロート)のボーカル、Bruno Cardoso(ブルーノ・カルドーゾ)とのデュエット曲。二人の熱唱も最高ですし、背後にひろがる絶景にも息をのみます。

2022年には、パゴージのスタジオ・アルバム“Numanice #2″(ヌマナイシ・ドイス)をリリース。

Ludmilla – Maldivas | Numanice #2 – Ao Vivo

“Maldivas”(マウヂーヴァス)は、パートナーのブルナに捧げられた一曲で、ここに貼ったのはライブ版です。「私はこの女の人と結婚して、モルディヴに行く」という歌詞で、ステージではブルナと一緒にダンスしています。この曲は大ヒットし、アルバム“Numanice #2”はアメリカでラテングラミー賞を受賞するに至りました。

最後に

ファンキ、R&B、パゴーヂ、なんでも歌いこなすブラジルのトップアーティスト、Ludmilla。

黒人女性でバイセクシュアルという属性をもちながら、国際的に成功し、その成功の果てに、どんどん新しいことにチャレンジし続けています。今後、どんなアーティストとコラボするのか、どんなジャンルに挑戦するのか、活躍から目が離せません。

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