Anittaの5枚目アルバム”Versions of Me”
2022年4月12日、Anitta(アニッタ)の待望のニューアルバムがリリースされました。タイトルは“Versions of Me”(ヴァージョンズ・オブ・ミー)。5枚目のスタジオアルバムです。
「ブラジル人女性歌手が、今、世界でウケるポップスを作るとしたらどうなるか」。そういった野心的な試みを続けてきたアニッタにとって、ひとつの記念碑的な作品となりました。
前作”Kisses”では、全10曲のうち9曲がコラボだったのに対し、今作は、全15曲のうち7曲のみがコラボで、あと8曲はアニッタ一人で歌っています。
また、前作が「ラテン」に寄せていたのに比べて、今作は「英米」に寄せてきたのも特徴です。
“I’d Rather Have Sex”、”Love You”、”Boy’s Don’t Cry”、”Versions of Me”、”Love Me, Love Me”は、どれも「アメリカで人気な女性アーティスト」が歌っていてもおかしくないような感じの曲に仕上がっています。「ブラジルらしさ」を期待していたファンにとっては少し残念なことかもしれませんが、個人的にはアニッタの表現の幅広さを改めて知ることができ、「世界の歌姫」としての貫禄を感じました。
この記事では、アルバムの中から特に注目すべき曲を7曲取り上げ、コラボしているアーティストや曲の特徴を紹介します。
特に注目の7曲
Envolver
アルバム一曲目は、Tiktokのダンス・チャレンジで爆発的にヒットした“Envolver”(エンヴォルヴェール)。SpotifyのGlobalランキングで、ブラジル人アーティストとして初めて「世界1位」となりました。この曲でアニッタを知ったという人も少なくないのではないでしょうか。
Gata
“Gata”(ガータ)は、プエルトリコのChencho Corleone(チェンチョ・コルレオーネ)とコラボしたレゲトンの曲。「夏!」って感じがしますよね。チェンチョ・コルレオーネは、ラテンアメリカのレゲトン界で有名な歌手です。
Gimme Your Number
“Gimme Your Number”(ギミ・ユア・ナンバー)は、アメリカのラッパーTy Dolla $ign(タイ・ダラー・サイン)とのコラボ。ラテンの名曲“La Bamba”(ラ・バンバ)を、まさかのダークなトラップにした、意外性のある一曲です。
『ラ・バンバ』は日本でもCMで使われたりしていたので、一定の年代以上の人にとっては、どこかで聞いたことのあるメロディーだと思います。私はアニッタのこの曲を聴いて以来、もう「ギミヤナンバー」にしか聞こえなくなってしまいました。
Boys Don’t Cry
”Boys Don’t Cry“(ボーイズ・ドント・クライ)は、アルバム先行シングルです。最近の英米圏の「80年代回顧」をくんでのことだと思いますが、この曲も80年代アメリカ風のポップスです。ビデオもレトロな感じがして面白いです。アルバム中盤はこうした感じの英語のソロ曲が続きます。
Ur Baby
“Ur Baby”(ユア・ベイビー)は、アメリカのR&Bアーティスト、Khalid(カリード)とのコラボ。レゲトンのリズムでありながらスローテンポで、アニッタとカリードの声のハーモニーが心地よい一曲です。私はファンキ(Funk)でお尻を振りまくるアニッタも大好きなんですが、こういうしっとりした歌声も、彼女にしかない色気があって好きです。
Girl From Rio
“Girl From Rio”(ガール・フロム・リオ)は、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「イパネマの娘」のカバーで、アルバムの先行シングルです。アルバムの中でも貴重な「ブラジルらしさ」のある曲となりました。
なお、このMVは高く評価され、数々の音楽賞を受賞しています。2021年のMTV Miaw Brasilの「最高のクリップ」部門、ムウチショウ賞の「今年の音楽」部門と「最高のクリップ」部門、2022年のラテン・アメリカン・ミュージック・アワードの「人気のビデオ」部門、以上すべてを受賞しました。
なお、ブラジル音楽の音楽賞について、それぞれ詳しく知りたいという方は、こちらの記事をご覧ください。
Que Rabão
“Que Rabão”(キ・ハバウン)は、このアルバムで唯一のファンキの曲です。Mr Catra(ミスター・カトラ)という、もう亡くなられたファンキ歌手のしゃがれ声がサンプリングされています。共演は、アメリカのラッパーYG、ブラジルのファンキ界からは、MC Kevin o Chris(エミセー・ケヴィン・オ・クリス)とプロデューサーPapatinho(パパチーニョ)が参加しています。
最後に
アニッタの5枚目アルバム”Versions of Me”は、これまで以上に英米圏のトレンドに寄せた作品になりました。先行シングルだけでもぜいたくなラインナップですが、個人的にはKhalidとのコラボが新たな路線でとても面白く感じます。
アニッタの魅力はダンスとMVにもあるので、今後どの曲がシングル化され、どんな振付でMVがつくられるのか、楽しみです。
なお、アニッタのこれまでの代表作が知りたいという方は、次の記事をご覧ください。MVがだいたいセクシーなので、こういったタイトルになっています。
セクシーなのは苦手、という方もいらっしゃると思うので、こんな記事も書きました。