初めて聴く人にオススメのMPB名盤10選【MPB特集】

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ブラジル音楽のジャンル、MPB

こんにちは、ヨシイタケコです。ブラジルの音楽を聴き始めてもうすぐ20年になります。

今回は、MPBを初めて聴く人にオススメの名盤10枚、ご紹介しようと思います。

「ブラジル音楽といえば、ボサノバとサンバしか知らない──。」

「なんとなくブラジルの音楽に興味があるけれど、何から聴けばいいのか分からない──。」

そんな方にむけて、初心者でも聴きやすく、聴けば「MPBとは何か」が分かるような名作を選んでみたつもりです。MPBファンの方にとっては「なぜこれが選ばれていて、あれが選ばれていない?」というツッコミもあると思いますが、そういった意見の違いも含めて楽しんでいただけると嬉しいです。

MPBとは?

ボサノバよりも後に登場した革新的な音楽

まず最初に、MPBとは何か、簡単に説明しておきます。

MPBは、ボサノバよりも後に生まれたブラジル音楽のジャンルです

この「ボサノバよりも後」というのが重要です! ボサノバが、裕福でハイカルチャーな白人の音楽であったのに対し、MPBは、若者The Beatles(ビートルズ)のような海外のロックに影響を受け、さらにブラジル独自の伝統的音楽を再発見することで誕生しました

つまり、MPBという音楽ジャンルには、何か特定のリズムや楽器構成があるわけではありません。むしろ、「ボサノバよりも後に登場した革新的な音楽」くらいの意味合いで使われ始めたジャンル名です。

だから、ほんとうに色々な音楽があります。ロックソウルR&Bジャズレゲエ、そしてサンバなどブラジル独自の音楽──。その多様性、革新性、独創性こそが、MPBの魅力です!

革新的なサイケデリック・ロック・バンド、Os Mutantes

MPBの読み方「エミペーベー」

なお、MPBを「エム・ピー・ビー」と読んでもまったく問題ないと私は思うのですが、一応ブラジルのポルトガル語では「エミ・ペー・ベー」と読みます。

「Música Popular Brasileira」(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)、直訳して「ブラジルのポピュラー音楽」の略語です。

「ブラジルポップス」イコール「MPB」ではない!

そして、もっと分かりにくいことを付け加えておくと、「ブラジルのポップス」と「MPB」は、同じものではありません! たとえば、このブログで注目しているMarina Sena(マリーナ・セナ)は、MPBには分類されず、あくまでもポップスのアーティストとして扱われています。

ポップスとMPBを区別する線引きは、「伝統的なMPBの文脈に位置づけることができるかどうか」で判断されているようです。つまり、ある種の「伝統性」と「芸術性」が無いと、MPBに分類されません

とはいえ、こういった線引きは主観的なものなので、評論家やリスナーが何を「MPB認定」するかは、国や時代によっても変わります。ブラジル人にとってのMPBと、アメリカ人にとってのMPB、日本人にとってのMPB、それぞれにズレがあり、この点について私は「みんな違って、みんな良い」と思っています。

【初心者にオススメ】MPBの名盤10選

前置きが長くなりました。いよいよ名盤10枚のご紹介です。

Jorge Ben サンバとロックの融合

Take It Easy My Brother Charles

Jorge Ben(ジョルジ・ベン)は、サッカーサンバが息づく町、リオデジャネイロで生まれ育ちました。1960年代以降に、ジャズソウルロックなど北米音楽に影響を受けた作品を発表し、その独自の音楽性は、時代を超えて若いアーティストに影響を及ぼし続けています。

1969年のアルバム「Jorge Ben」(ジョルジ・ベン)は、彼独自のグルーヴ感が強く出ており、最初に聴く一枚としてオススメです。Jorge Benは、私が一番好きなブラジルのアーティストで、別の特集記事も書いています。よければこちらの記事もご覧ください。

Tim Maia ブラジリアン・ソウルの帝王

Acenda o farol

Tim Maia(チン・マイア)リオデジャネイロ出身です。「ブラジリアン・ソウルの帝王」とも呼ばれ、1970年代のソウルの作品群はとくに愛され続けています。

ただ、初期作品はどれもタイトルが「Tim Maia」で初見殺しなのと、カルトに入信していた時期があるため、カルトを脱退した後の1978年の作品「Disco Club」(ジスコ・クルビ)を選んでみました。ディスコ・ソングとしても名曲ぞろいだと思います。

Tim Maiaについても別記事があるので、こちらもどうぞ。

Os Murantes トロピカルなサイケデリック・ロック

Ando Meio Desligado

1960年代後半のブラジルでは、The Beatles(ビートルズ)のような海外アーティストの影響を受け、サイケデリック・ロックが大流行していました。そんな中、ブラジル最大の都市サンパウロで結成されたサイケのバンドが、Os Mutanes(オス・ムタンチス)です。「Os」は冠詞なので、単に「ムタンチス」とも呼ばれています。ムタンチスは、欧米で最先端のロックをブラジル的なセンスでやり、後述する「トロピカリア・ムーブメント」を代表するバンドになりました。

1970年のアルバム「A Divina Comédia ou Ando Meio Desligado」(ア・ジヴィーナ・コメジア・オウ・アンド・メイオ・デスリガード、邦題「神曲」)は、サイケの名盤としても名高く、私も大好きな作品です。女性ヴォーカルのRita Lee(ヒタ・リー)は、「ロックの女王」としてブラジルで敬愛され続けています。

Rita Lee ブラジルのロックの女王

Agora Só Falta Você

Rita Lee(ヒタ・リー)はムタンチス脱退後、ソロ活動に転じて数々の名作を残しています。なかでも1975年にRita Lee & Tutti Frutti(ヒタ・リー・イ・トゥッチ・フルッチ)名義でリリースしたアルバム、「Fruto Proibido」(フルート・プロイビード)は、ブラジル・ロック史に残る最重要作品のひとつです。

ヒタリーの生涯については、ブログ内でこんな記事もあるので、よければご覧ください。

Djavan ブラジル流R&B

Djavan – Samurai (Áudio Oficial) ft. Stevie Wonder

Djavan(ジャヴァン)はブラジルの北東部(Nordeste、ノルデスチ)、アラゴアス州出身のアーティスト。ビートルズに憧れて音楽家をめざしたというジャヴァンは、数々の名曲を残していますが、1982年に北米で制作したアルバム「Luz」(ルス)が特に重要です。

他に似ている音楽が存在しない、ジャヴァンのブラジル流R&Bは、国際的にも高く評価されており、現在の若いアーティストに影響を及ぼし続けています。

Caetano Veloso MPBの最重要人物①

Os Passistas

MPBといえば、Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)です!

そもそもMPBは、カエターノ・ヴェローゾが1960年代にビートルズを知り、それまでやっていたボサノバをやめて、新しい芸術運動「トロピカリア」(Tropicália)を主導したことから始まりました

そんなカエターノの「まず最初に聴く1枚」として私がオススメしたいのは、1997年の「Livro」(リヴロ)。カエターノが生まれ育ったブラジル北東部(Nordeste、ノルデスチ)に特有の音楽が取り込まれており、まさに「ブラジルらしい革新的なポップス」だと思います。

Caetano Veloso 軍事政権による弾圧

Irene (Remastered 2006)

カエタノ・ヴェローゾは特に重要なアーティストなので、もう一枚ご紹介します。1969年の「Caetano Veloso」、別名「ホワイトアルバム」です。

この作品について語るとき、ブラジルの軍事政権の話をしないわけにはいきません。

ブラジルでは1964年にクーデターが起こり、軍事政権による独裁が始まっています。これに対して抗議するパフォーマンスをしたということで、1968年、トロピカリアの中心人物であったCaetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)のふたりが逮捕され、自宅軟禁状態に置かれ、翌年には国外に亡命することになりました。

そんな自宅軟禁の時期に、ギターの弾き語りを録音し、別人物によるアレンジをへてリリースされたのが、この「ホワイトアルバム」です。カエターノの天才的なメロディー・センスが表れた名作だと思います。そして、このアルバムの収録曲は、Os Mutantes(オス・ムタンチス)Gal Costa(ガル・コスタ)のようなトロピカリアの盟友たちによって歌い継がれていくことになりました。

Gilbert Gil MPBの最重要人物②

Gilberto Gil – “Expresso 2222″ – Expresso 2222

Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)も、MPBの最重要人物です!

ノルデスチバイーア州サルヴァドール出身で、カエターノと共に芸術運動「トロピカリア」(Tropicália)を起こし、これがMPBの原点となりました。そして、その影響力の強さゆえに軍事政権から目を付けられ、カエターノと同時に逮捕され、亡命しています。

ジルの魅力は、そのリズム感遊び心ではないでしょうか。アルバム「Expresso 2222」(エスプレッソ・ドイスドイスドイスドイス)は、1972年、亡命先から帰国した後にリリースされています。その表題曲は、ライブで定番の名曲で、彼の音楽性のエッセンスが詰まっていると思います。

Milton Nascimento ミナスの至高のアーティスト

Clube Da Esquina Nº 2

ここまで紹介してきたのは、リオデジャネイロ、サンパウロ、ノルデスチのアーティストでした。

ですが、MPBを聴くなら、ミナスジェライス州も忘れてはいけません。ミナスジェライスでは、1970年ごろから、リオ出身のMilton Nascimento(ミルトン・ナシメント)を中心に独自の音楽シーンが形成され、ロック、クラシック、民族音楽を取り込んだ独自の音楽が誕生しました。MPB愛好家は、これを「ミナス系」と呼びます。

そんな「ミナス系」の最高傑作とされるのが、1972年の「Clube Da Esquina」(クルビ・ダ・エスキーナ)です。どこか懐かしい感じがして、「聖なるもの」に触れたような感覚をえる音楽だと思います。

Elis Regina ブラジル音楽史上、最高の歌手

Corrida De Jangada (Ao Vivo)

最後の1枚は、Elis Regina(エリス・レジーナ)です。なお、ポルトガル語では「エリス・ヘジーナ」と読みますが、世界的に有名なので、「エリス・レジーナ」と表記しておきます。

数々の名盤がありますが、最初に聴く一枚として私がオススメするのは、1969年の「Elis Regina in London」です。ヨーロッパ・ツアーで立ち寄ったロンドンで、わずか2日間で完成させたという驚異的な音源で、「とにかく歌がウマい!」ということが誰でも聴いてすぐ分かる作品だと思います。

また、エリスレジーナはMPB以前の時代から人気歌手で、TVの音楽番組で司会をやっており、その番組からカエターノ・ヴェローゾジルベルト・ジルが登場しています。新しいアーティストの活動を後押しし、エリス自身もさらに芸術性を追求した作品をつくることで、MPBというジャンルは発展しました。

不幸なことに、ドラッグのオーバードーズによって37歳の若さで命を落としていますが、今もなおブラジル音楽史上、最高の歌手として尊敬され続けています。

最後に

最後までお付き合いいただきありがとうございます。

MPBファンの方はお気づきだと思いますが、ここで選んだ10枚は、日本のディスクガイドや海外誌が選ぶ「名盤」とは、ちょっと違っています。それは、日本でJ-Popに慣れ親しんだ人にとって、「聴きやすく、入りやすいのではないか」と思う作品を選んだからです。

これらの作品を通して、一人でも多くの方が「MPBって面白い!」と思っていただけたら嬉しいです。

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