【MPB特集】Jorge Ben Jorの名盤10選

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【MPB特集】Jorge Ben Jor(ジョルジ・ベンジョール)

こんにちは、ヨシイタケコです。ふだんは「現在のブラジルポップス」について紹介するブログをやっています。

ですが、これからしばらくのあいだ、「古き良きブラジルポップス」であるMPB(エミペーベー)について、特集記事を書いてみようと思います。

第一弾のテーマは、Jorge Ben Jor(ジョルジ・ベン・ジョール)。じつは私が一番好きなブラジルのアーティストです。そもそもブラジル音楽を真剣に聴きだしたのは、ジョルジベンと出会ったからでした。ここ数年、ブラジルの最新音楽をチェックしていても、ジョルジベンの作品を引用したものを見かけることがよくあり、その影響力の強さに驚かされています。

でも、キャリアが長いためにリリース作が多く、「どの作品から聴けばいいか分からない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、「絶対に聴いておきたい名盤」を5枚、さらに「その次に聴くならこれ」という5枚を紹介します。

ジョルジ・ベンジョールとは誰?

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まず最初に、ジョルジベンとは誰か、簡単にまとめておきます。

ジョルジ・ベンジョール(Jorge Ben Jor)は、リオデジャネイロのアーティストで、自称1945年3月22日生まれ(自称、の意味については後述)。サンバロックファンクソウルを融合させ、唯一無二の音楽を作り出しました。その音楽はSamba Rock(サンバ・ホッキ)とも形容されますが、時代や作品ごとに変わる音楽性の幅広さもジョルジュベンの魅力のひとつです。

また、裕福な家庭ではなく、リオの庶民として生まれ育っていることにも注目です。父親は港湾労働者で、サルゲイロというサンバ団体(エスコーラ・ジ・サンバ)のメンバー、そして母親はエチオピア系移民。幼少期からサンバサッカーの世界で育ち、フラメンゴジュニアクラスの選手だった時期があります。また、リオデジャネイロのサンジョゼ神学校に2年間通い、ラテン語とグレゴリオ聖歌を学んだことも、後の音楽性に影響を及ぼしたはずです。

18歳で音楽の道に進み、1963年初のスタジオアルバム「Samba Esquema Novo」(サンバ・エスケーマ・ノーヴォ)を発表すると、これが歴史的名盤となりました。

【5枚】絶対に聴いておきたい名盤

ということで、ジョルジベンの名盤5枚です。

1963年 Samba Esquema Novo(サンバ・エスケーマ・ノーヴォ)

Mas, Que Nada!

ブラジル音楽史に刻まれる名盤ボサノバでもない、サンバでもない、ロックでもない、まったく新しい音楽がここで誕生しています。Sérgio Mendes(セルジオ・メンデス)がカバーしたことで有名な「Mas Que Nada」(マシュ・ケ・ナーダ)、名曲「Chove Chuva」(ショーヴィ・シューヴァ)収録。なお、「こんな名盤が18歳で作れるはずない!」ということでジョルジベンには年齢詐称疑惑があり、「1939年生まれ説」があります。

1969年 Jorge Ben(ジョルジ・ベン)

Jorge Ben Jr – Take It Easy My Brother Charles

個人的に「最初に聴く1枚」としてオススメなのがこれ。ジョルジベンの音楽がもつ独特のグルーヴ感が、全編を通して強く出ています。Astrud Gilberto(アストラッド・ジルベルト)カヒミカリィもカバーした「Take It Easy My Brother Charlie」(テイク・イット・イージー・マイ・ブラザー・シャーリー)収録。BGMとして流しても、おしゃれな感じがすると思います。

1970年 Força Bruta(フォルサ・ブルータ)

O Telefone Tocou Novamente

ジョルジベンの音源の中で、私が一番たくさん聴いたのは、この作品です。アルバム後半、いわゆるB面が神がかり的で、サンバ由来の高揚感と郷愁がぎゅっと濃縮されています。ブラジル的な「サウダージ」を強く感じる一枚です。

1974年 A Tábua de Esmeralda(ア・タブア・ジ・エスメラルダ)

Jorge Ben Jor – Zumbi (Áudio Oficial)

ジョルジベンの最高傑作として挙げられることが多く、私もそうだと思います。錬金術をテーマとしたアルバムで、ジャケットも楽曲も神秘主義的な世界観に貫かれている一方、それがあくまで黒人文化の文脈であることも重要です。17世紀ブラジルの逃亡奴隷のリーダー、ズンビ・ドス・パルマーレス(Zumbi dos Palmares)を称える曲「Zumbi」(ズンビ)は、Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)もカバーしています。

1976年 África Brasil(アフリカ・ブラジル)

Ponta De Lança Africano(サッカー観戦で偶然見かけたアフリカ系選手をたたえる曲)

アメリカの黒人音楽とブラジルの黒人音楽を融合させた、キャリアの集大成ともいえる作品。ファンク、ソウル、サンバの交じり合うグルーヴィーな音楽、そしてアフロ・ブラジリアンとしての誇り高さを歌う歌詞が最高です! ヒット曲「Taj Mahal」(タージマハル)「Zumbi」(ズンビ)別バージョンが収録されていることからも、この作品がある種の総決算として制作されたことがうかがえます。

【5枚】その次に聴くならこれ

ここまでに挙げた名盤5枚を聴いて「もっと聴きたい!」となったなら、次にオススメしたい作品を紹介します。

1965年 Big Ben(ビッグ・ベン)

Patapatapata

ジャズ色が強い過渡期の作品。ジョルジ・ベンの作品としては地味だけれど、きちんとジョルジ・ベンの色が出ています。

1971年 Negro É Lindo(ネグロ・エ・リンド)

Rita Jeep

タイトルは「黒は美しい(Black is beautiful)」で、アメリカの黒人運動から取られています。「Cassius Marcello Clay」はアメリカのボクサー、モハメド・アリを称える曲です。Rita Lee(ヒタリー)の愛車のジープについて歌っているという曲「Rita Jeep」から始まり、音楽性の幅の広さが出ている一枚だと思います。

1972年 Ben(ベン)

Taj Mahal

Rod Stewart(ロッド・スチュワート)盗作されたことでも有名な「Taj Mahal」(タージマハル)のオリジナル版を収録しています。アイコニックなアルバム・ジャケットも魅力的。

1975年 Gil & Jorge(ジル・イ・ジョルジ)

Meu Glorioso São Cristovão

トロピカリア・ムーブメントの盟友、Gilberto Gil(ジルベルト・ジル)とのセッション。二人の才能がぶつかりあい、「音楽とはここまで自由なのか」と感動するライブ音源です。

1975年 Solta o Pavão(ソウタ・オ・パヴァウン)

Jorge Da Capadócia

アルバム「A Tábua de Esmeralda」、「Solta o Pavão」、「África Brasil」は三部作です。超名作のあいだに挟まれているため存在感が薄いのですが、これも名作だと思います。Racionais MC’s(ハシオナイス・エミセーズ)にカバーされた「Jorge Da Capadócia」収録。

まとめ

最後に、この記事で紹介したアルバムを時系列で並べて整理しておきましょう。

  • 1963 Samba Esquema Novo
  • 1965 Big Ben
  • 1969 Jorge Ben
  • 1970 Força Bruta
  • 1971 Negro É Lindo
  • 1972  Ben
  • 1974 A Tábua de Esmeralda
  • 1975 Gil & Jorge
  • 1975 Solta o Pavão
  • 1976 África Brasil

これだけでなく、他にもまだたくさんの音源があります。SpotifyやYouTubeでも多くの音源が公開されているので、ぜひ発掘してみてください!

ただ、最初に紹介した名盤5枚については、聴けば聴くほど良さに驚かされる作品だと思います。CDでもLPでも、音源を見つけたら手に入れておくのがオススメです。

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