はじめに
「ドラゴンボール」、「セーラームーン」、「NARUTO(ナルト)」──。
もはや日本文化を代表する存在になった、漫画・アニメ。そのファンは世界中に存在し、海外の音楽シーンでも、日本のアニメの影響を受けたミュージックビデオが、たくさん制作されています。
そこでこの記事では、日本の漫画・アニメにインスパイアされた海外のミュージック・ビデオを、5個まとめてみました。
なお、「ブラジルのポップス」をテーマとしている当サイトの特性上、ブラジル音楽が多めです。この記事を通して、アニメ好きな方も、ブラジル音楽に興味をもってくださると嬉しいです。
それでは、ひとつひとつ見ていきましょう!
日本のアニメ風の洋楽MV
Daft Punk ”One More Time”【2000年】
2000年にリリースされたDaft Punk(ダフトパンク)の”One More Time“(ワン・モア・タイム)は、私のようなアラフォー以上の世代にとって、聴いた瞬間に懐かしさが込み上げてくる一曲ではないでしょうか。
Daft Punkは1993年から2022年に活動したフランスの二人組で、この曲”One More Time”は、日本でも爆発的にヒットしました。
“One More Time”が話題となったのは、曲だけでなく、クリップビデオの「独特さ」にも理由があります。どこからどう見ても「銀河鉄道999(スリーナイン)」風のアニメは、松本零士先生ご本人をスーパーバイザーとして迎え、竹之内和久さんが監督をつとめ、制作されました。
今となっては信じられませんが、当時の日本では、「アニメ=オタク=ダサい」という価値観が強くありました。そんな中、最新のエレクトロニック・ミュージックと共に繰り出されるレトロなアニメは、強烈な印象があったのを覚えています。
このミュージックビデオには、ちゃんとしたストーリーがあります。青い肌の人たちが住む惑星で、ライブが開催され、みんなでバンドの音楽に酔いしれていると、いつのまにか黒づくめの軍団に囲まれ、襲撃を受ける、という内容です。
かなり不穏なエンディングですよね。私もリアルタイムでは部分的にしか見たことが無く、この記事を書くために、初めて最後まで見て、「えっ!この後どうなるの?!」と不安になりました。
なんと、続きがあります! ダフトパンクと松本零士先生のコラボで「Interstella 5555(インターステラ5555)」という映画を作っていて、どうやらこの映画を見るとストーリーが完結するようです。
松本零士先生を敬愛するダフトパンクの要望によって実現した作品のようですが、ここまで徹底して作品を形にした関係者全員に、拍手を送りたいです。
Dua Lipa ”Levitating”【2020年】
イギリスのディーヴァ、Dua Lipa(デュア・リパ)の曲”Levitating“(レヴィテイティング)。アルバム”Future Nostalgia“(フューチャー・ノスタルジア)収録曲で、2020年にリリースされ、大ヒットしました。
2021年に公開されたこのアニメ版MVは、「ミンキーモモ」や「クリーミーマミ」、「セーラームーン」のような日本の魔法少女アニメを彷彿とさせる映像作品になっています。ファンシーなマスコット・キャラクターに至るまで、よく作りこまれていますよね。
制作は、日本のクリエイター集団NOSTALOOK。レトロポップなアニメのMVやイラストを得意としているようです。
ところが”Levitating”は、Artikal Sound Systemというバンドの“Live Your Life”という楽曲に似ており、盗作疑惑が発生。訴訟は棄却されたようですが、原告は納得していないようで、今後の動向に注目です。詳しくは、外部記事のNME Japan(2022/3/2)、CMU(2023/1/23)をご覧ください。
Emicida ”Quem Tem Um Amigo (Tem Tudo)”【2020年】
ブラジルのEmicida(エミシーダ)と日本の東京スカパラダイスオーケストラのコラボ曲。ゲストとして、サンバ・パゴージの大御所Zeca Pagodinho(ゼカ・パゴジーニョ)、サンバのデュオPrettos(プレトス)も参加しており、2019年のEmicidaのアルバム”AmarElo“(アマレーロ)に収録されています。
2020年に公開されたMVは、「ドラゴンボール」へのオマージュで、鳥山明先生のような画風のアニメになっています。
「悟空」はEmicida、「亀仙人」はZeca Pagodinho、スカパラもカメオ出演のような形で登場しており、「天津飯」と「チャオズ」はPrettos、「クリリン」的なポジションのキャラは、エミシーダの兄弟Fióti(フィオチ)でしょうか。
オープニングにも登場する帽子をかぶった「神様」は、Emicidaが慕っていたWilson das Neves(ウィルソン・ダス・ネヴェス)というサンバのアーティストです。2人でテープを郵送しあいながら作曲を進めていたようで、Wilson das Nevesの死後、その中の一曲を元に、トリビュートとしてこの曲が誕生しました(GQ、2020/5/7)。
“Quem Tem Um Amigo (Tem Tudo)“(ケン・テン・ウン・アミーゴ・テン・トゥード)というタイトルと歌詞は、「友達が一人でもいる人は、すべてを持っている」という意味。まさにジャンプ漫画の精神を引き継いだ一曲だと思います。
Emicidaはドラゴンボールが大好き? ネイマールが悟空?!
余談ですが、Emicida(エミシーダ)はドラゴンボールのファンとして知られています。
2010年の曲、”Avua Besouro“や”Emicídio“では、それぞれラップに「かめはめ波」や「ミスター・ポポ」(Senhor Popo)が登場。
2012年発表された”Zica, Vai Lá“(ジカ・ヴァイ・ラ)のMVは、地下格闘技に魅せられたEmicidaが、悟空のような衣装のNeymar(ネイマール)に基礎トレーニングを習うというストーリーになっています。このMVには、テクノブレガのスター歌手、Gaby Amarantos(ガビ・アマラントス)も出演しており、見どころが多いです。
ご覧いただければ分かると思うのですが、最初は真剣なムードなのに、ネイマールが出てきた瞬間、つい笑ってしまいますよね──(ネイマールとそのファンの皆さん、ごめんなさい)。
Thiago Pantaleão ”Konoha”【2022年】
ブラジルのThiago Pantaleão(チアゴ・パンタレオン)による2022年の曲。アルバム”Fim do Mundo“(フィン・ド・ムンド)収録曲で、Lukinhas(ルキーニャス)とのコラボです。
「NARUTO -ナルト-」の二次創作BL(ボーイズラブ)ともいえるMVで、曲タイトルは”Konoha“「木の葉」。歌詞にもナルトの世界観が引用されています。
ミュージック・ビデオは、リオ・デ・ジャネイロの架空のファヴェーラ(スラム街)、「ファヴェーラ木の葉」が舞台となっており、ナルトとサスケに似た少年が共に成長し、お互いの恋心に気づくという物語。
チアゴ・パンタレオンは「ナルト」の大ファンだと公言しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
Alok & Luan Santana ”Próximo Amor”【2018年】
最後に紹介するのは、世界的に有名なクラブミュージックのDJ Alok(アロック)と、ブラジルのカントリーとも呼ばれるセルタネージョ(Sertanejo)のトップ・スター、Luan Santana(ルアン・サンタナ)のコラボ曲。2018年の作品です。
この歌詞動画は、日本のアニメやゲームの影響を受けているのだと思いますが、背景は香港の夜景です。歌のサビで字幕は中国語になり、ポルトガル語の歌詞は画中の看板に散りばめられる演出で、看板の中には「I♡盧安」(アイ・ラブ・ルアン)という文字も見られます。
Alokのサウンドはダンス・ポップでありながら、Luan Santanaのダイナミックな歌声はセルタネージョそのもので、ブラジルらしいポップスの良曲だと思います。
最後に
ここまで、日本のアニメにインスパイアされたミュージック・ビデオを紹介してきました。
私は「日本すごい!」的なことは語りたくないのですが、ここ数年で「進撃の巨人」にハマり、「日本の漫画・アニメは本当にすごい!」と心の底から思っています。なので、日本風アニメが海外のミュージック・ビデオで見られると、単純に嬉しいです。
また新たな作品を発見したら、この記事に追加していこうと思います。
最後に、ブラジルでも人気だという「ドラゴンボールZ」の、ブラジル版主題歌を貼っておきます。「チャーラー、ヘッチャラー♪」は、もしかするとブラジルでも通じるのかもしれません。