Ludmillaがラテングラミー受賞!
Embed from Getty Images2022年11月17日、アメリカのラスベガスで第23回ラテングラミー賞の授賞式が開催され、ブラジルのLudmilla(ルジミーラ)が賞を獲得しました。
受賞したのは、4枚目となるアルバム“Numanice #2”(ヌマナイシ・ドイス)、部門は「最優秀サンバ・パゴージ・アルバム」(Best Samba/Pagode Album)。
同じ部門で、サンバの大御所Martinho Da Vila(マルチーニョ・ダ・ヴィラ)やPéricles(ペリクレス)もノミネートされていた中での快挙でした(ノミネートはこちらの記事でご確認ください)。
今のブラジル・ポップスのトップ・アーティスト
Ludmillaは、今のブラジリアン・ポップスを語るうえで欠かせないトップ・アーティストです。
アメリカのビヨンセに憧れて音楽の道に入り、ファンキ(ブラジル独自のストリート・ミュージック)で有名になって、リオ五輪の開会式でも歌っています。
なお、ラテングラミーでのノミネートは2回目。2017年には、ファンキ・ポップ(Funk Pop)のアルバム”A Danada Sou Eu“(ア・ダナダ・ソウ・エウ)でノミネートされています。
Ludmillaがサンバ?!
今回の受賞は、なんとサンバ・パゴージ部門。ノミネートされた部門の「意外さ」についてはこちらの記事でも触れました。
Ludmillaがこの部門を受賞したということは、ブラジルではポップスのアーティストとして認知されている彼女が、アメリカ人の視点から見たとき、今のブラジルのサンバ・パゴージを代表するアーティストに見えるということです(「パゴージとは何?」という方は、こちらの記事をご覧ください)。
Ludmillaがパゴージに取り組み始めたのは、2020年のこと。彼女のパゴージのEPやアルバムには、現時点ですべてに“Numanice”(ヌマナイシ)という名前が付けられています。この”Numanice”シリーズのリスナーは、おそらくLudmillaのファンが多く、普段パゴージやサンバを聴いている層から聴かれているのかは分かりません。そんな彼女の取り組みが、海外の音楽賞からお墨付きを得る形となり、ファンである私も驚いています。
女のパゴージは珍しい?
ところで、パゴージ業界は、不思議なことに、男性中心で回っていました。
サンバ自体は女性のアーティストが多く、Alcione(アルシオーネ)やElza Soares(エルザ・ソアレス)などなど、いくらでも名前を挙げることができます。
でもなぜか、パゴージの女性アーティストは、なかなか思い浮かばない──。
それは私だけではないようで、ブラジルでもこんな記事が書かれています。パゴージ界に特出した女性アーティストが近年いなかったことを指摘しつつ、いま注目の女性アーティストを紹介する記事です(POP line, 2021/08/03)。
バックコーラスとして女性が歌っていることはあっても、メインボーカルとして女性が歌うことは極めて珍しい。そんなパゴージの世界で、ポップ・スターである黒人女性のLudmillaが、最近ブラジルで流行している音楽を取り込んでパゴージをやってみせたのは、とても画期的でした。
Ludmillaの影響でパゴージが流行?
そして、特に注目なのが、2022年のブラジル・ポップス界で、パゴージの曲が続々と出てきてたことです。
Gloria Groove(グロリア・グルーヴ)は2月リリースのセカンドアルバム”Lady Leste”で、パゴージ・グループのSorriso Maroto(ソヒーゾ・マロート)と”Tua Indecisão”という曲でコラボしています。
Pabllo Vittar(パブロ・ヴィター)も8月にLukinhas(ルキーニャス)とコラボし、ブラジル大統領選に向けたルラ候補の応援ソング、 “Volta Pra Ficar”をリリース。
Iza(イザ)も9月、パゴージのスター歌手Ferrugem(フェフージェン)と”Me Perdoa”でコラボ。イザはデビューアルバムでThiaginho(チアギーニョ)ともコラボしていましたが、その曲はパゴージではなかったことも追記しておきます。
このように、ブラジルポップス界隈で、レゲエ風の曲やトラップ風の曲をやるのと同じような感覚で、パゴージ風の曲をやる動きが出てきているような気がします。この動きがどこまで続くのかはまだ分かりませんが、無視できない変化です。