- 2022年ラテングラミー賞、ノミネート発表
- ブラジル音楽枠のノミネート、まとめ
- 「最優秀ポルトガル語コンテンポラリー・ポップ・アルバム」Best Portuguese Language Contemporary Pop Album
- 「最優秀ポルトガル語ロック・オルタナティブ・アルバム」Best Portuguese Language Rock or Alternative Album
- 「最優秀サンバ・パゴージ・アルバム」Best Samba/Pagode Album
- 「最優秀MPBアルバム」Best MPB (Musica Popular Brasileira) Album
- 「最優秀セルタネージョ・アルバム」Best Sertaneja Music Album
- 「最優秀ポルトガル語ルーツミュージック・アルバム」Best Portuguese Language Roots Album
- 「最優秀ポルトガル語曲」Best Portuguese Language Song
- ブラジルポップスのノミネートについて、概括と感想
- 最後に 参考
2022年ラテングラミー賞、ノミネート発表
2022年ラテン・グラミー賞のノミネート作が発表されました。
ラテン・グラミーとは、アメリカ合衆国で選出されるラテンミュージックのための音楽賞で、2000年に創設されて以来、今年で第23回目となります。
賞は53の「部門」(Category)から成り、これらの「部門」は18の「ジャンル」(Field)に分類され、このうち1個の「ジャンル」がポルトガル語圏であるブラジルの音楽の枠となっています。
このラテングラミー、アメリカ合衆国で選ばれる賞だけあって、「アメリカ人から見たブラジル音楽」のトレンドを反映した賞と言えるでしょう。「日本人にとってのブラジル音楽」、「ブラジル人にとってのブラジル音楽」とはまた違った視座に立っており、それが面白くもあります。
なお、ブラジル音楽に関係する音楽賞についてはこちらの記事もどうぞ。
ブラジル音楽枠のノミネート、まとめ
2022年のラテングラミー賞の中でも、ブラジル音楽枠であるジャンル「ポルトガル語」のノミネート作をリストにしてみました。その他の部門でもブラジル人アーティストがノミネートされているのですが、まずはとりあえずブラジル音楽に限定された部門を見てみましょう。
「最優秀ポルトガル語コンテンポラリー・ポップ・アルバム」Best Portuguese Language Contemporary Pop Album
- “SIM SIM SIM”, Bala Desejo
- “PRA GENTE ACORDAR”, Gilsons
- “PIRATA”, Jão
- “DE PRIMEIRA”, Marina Sena
- “DOCE 22”, Luísa Sonza
「最優秀ポルトガル語ロック・オルタナティブ・アルバム」Best Portuguese Language Rock or Alternative Album
- “QVVJFA?”, Baco Exu Do Blues
- “O FUTURO PERTENCE À … JOVEM GUARDA”, Erasmo Carlos
- “SOBRE VIVER”, Criolo
- “MEMÓRIAS (DE ONDE EU NUNCA FUI)”, Lagum
- “DELTA ESTÁCIO BLUES”, Juçara Marçal
「最優秀サンバ・パゴージ・アルバム」Best Samba/Pagode Album
- “BONS VENTOS”, Nego Alvaro
- “MISTURA HOMOGÊNEA”, Martinho Da Vila
- “DESENGAIOLA”, Alfredo Del-Penho, João Cavalcanti, Moyseis Marques e Pedro Miranda
- “NUMANICE #2”, LUDMILLA
- “CÉU LILÁS”, Péricles
「最優秀MPBアルバム」Best MPB (Musica Popular Brasileira) Album
- “POMARES”, Chico Chico
- “SÍNTESE DO LANCE”, João Donato e Jards Macalé
- “INDIGO BORBOLETA ANIL”, Liniker
- “NU COM A MINHA MÚSICA”, Ney Matogrosso
- “PORTAS”, Marisa Monte
- “MEU COCO”, Caetano Veloso
「最優秀セルタネージョ・アルバム」Best Sertaneja Music Album
- “CHITÃOZINHO & XORORÓLEGADO”, Chitãozinho & Xororó
- “AGROPOC”, Gabeu
- “EXPECTATIVAXREALIDADE”, Matheus & Kauan
- “PATROAS 35%”, Marília Mendonça, Maiara & Maraísa
- “NATURAL”, Lauana Prado
「最優秀ポルトガル語ルーツミュージック・アルバム」Best Portuguese Language Roots Album
- “AFROCANTO DAS NAÇÕES”, Mateus Aleluia
- “NAESTRADA-AOVIVO”, Banda Pau E Corda Featuring Quinteto Violado
- “REMELEXO BOM”, Luiz Caldas
- “BELO CHICO”, Targino Gondim, Nilton Freittas, Roberto Malvezzi
- “SENHORADAS FOLHAS”, Áurea Martins
- “ORÍKI”, Iara Rennó
- “SENHORA ESTRADA”, Alceu Valença
「最優秀ポルトガル語曲」Best Portuguese Language Song
- “BABY 95”, Liniker
- “IDIOTA”, Jão
- “ME CORTE NA BOCA DO CÉU A MORTE NÃO PEDE PERDÃO”, Criolo Featuring Milton Nascimento
- “MEU COCO”, Caetano Veloso
- “POR SUPUESTO”, Marina Sena
- “VENTO SARDO”, Marisa Monte Featuring Jorge Drexler
ブラジルポップスのノミネートについて、概括と感想
さて、それでは2022年のラテングラミーでブラジリアン・ポップスがどう取り上げられているかについて、概括しておこうと思います。なお、私自身MPBも大好きだしスペイン語圏のラテン音楽も大好きですが、ブログの特質上「ブラジルの大衆的なポップス」に焦点を絞った記事となります。
アニッタは世界のスターに
Embed from Getty Imagesまず注目しなければならないのは、やはりAnitta(アニッタ)でしょう。
アニッタは、「ブラジル枠」ともいえる「ポルトガル語」の部門ではノミネートされていません。
他のラテンミュージックのアーティストと並んで、「一般」(General)の「レコード・オブ・ザ・イヤー」(Record Of The Year)部門で“Envolver”(エンヴォルヴェール)がノミネートされています。
この曲は、「アーバン」(Urban)の「ベスト・レゲトン・パフォーマンス」(Best Reggaeton Performance)部門でもノミネートされているのですが、いずれも「ブラジル枠」ではないのが重要です。
もやはアニッタは、ブラジルを飛び出てラテン・ミュージック界を代表するスターのひとりとなったということが、ラテングラミーの選考にも表れています。
ラテングラミー的な「ブラジル音楽」の刷新
「ポルトガル語」の各部門も見てみましょう。
今年になって、ノミネート作の傾向に変化が起こったような印象を受けました。
というのも、ラテングラミーは昨年まで、「海外市場で人気のMPB」が強かったように思います。ブラジルで流行っているポップスというよりも、あくまでも伝統的なMPBの流れにあるものがノミネートされる、そして「アメリカ人が好むブラジルらしいイメージ」が重視される、というイメージです。
たとえば一年前、2021年の「最優秀ポルトガル語コンテンポラリー・ポップ・アルバム」部門では、次の5作がノミネートされています。
- “Cor”, Anavitória(受賞)
- “A Bolha”, Vitor Kley
- “Duda Beat & Nando Reis”, Nando Reis & Duda Beat
- “Será que Você Vai Acreditar?”, Fernanda Takai
- “Chegamos Sozinhos em Casa Vol1”, Tuyo
それに対して今年は、Jão(ジャウン)やLuísa Sonza(ルイーザ・ソンザ)といった若いポップスターがノミネートされているのが印象的です。
正直な感想として、Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)やMarisa Monte(マリーザ・モンチ)、Criolo(クリオーロ)やLiniker(リニケル)がノミネートされるのは予測していたけれど、それに並んでルイーザのようなポップなアーティストも正当に評価されているのは嬉しい驚きでした。
ルイーザは今年のロックインリオにも出演しており、圧倒的なスター性、歌唱力、表現力で、ひときわ輝いていたように思います↓
Embed from Getty Imagesこうったノミネート作の毛色の変化は、ラテングラミーが提唱する「ブラジル音楽」に若い世代のポップスも取り込まれたということであり、とても重要な変化だと思います。
独自のカテゴライズ
また、Ludmilla(ルジミーラ)がサンバ部門でノミネートされていたり、Baco Exu Do Blues(バコ・エシュ・ド・ブルース)がロック部門でノミネートされているのも注目に値します。
というのも、Ludmillaはブラジルではあくまでもファンキ出身のポップスター。ちなみに2017年には、アルバム“A Danada Sou Eu“でもラテングラミーにノミネートされています。今回のノミネートは、彼女が最近新しく挑戦しているサンバ風のポップスでアメリカ人から高く評価された、ということで、今後の彼女のキャリアにも影響があるかもしれません。
Baco Exu Do Bluesの場合、ブラジル流Hip Hop/R&Bのアーティストですが、ラテングラミーではロック部門でのノミネートとなりました。これには賛否両論だと思いますが、「たしかにロックが好きな人にはぜひBacoの新作を聴いてみてほしい!」と共感するところもあります。
Gabeu(ガベウ)というクイアのアーティストも、ブラジルの王道のセルタネージョではないものの、セルタネージョというジャンルに挑む注目株としてノミネートされています。
こういった「アメリカ人だからこその視座」に立ったカテゴライズやノミネートは、固定観念を崩してくれて、とても面白いと思います。
マリーナ・セナの存在感
Embed from Getty ImagesMarina Sena(マリーナ・セナ)は複数部門にノミネートされています。彼女はもともとミナス系のバンドのキャリアがあったとはいえ、SNSで話題となり彗星のごとく現れた新人です。ラテングラミーにノミネートされたことで、国際的な評価も高いことが明らかになりました。
最後に 参考
授賞式は現地時間で11月17日です。ノミネート作を聴いて、結果を楽しみにして待ちましょう!
なお、この記事は以下の記事を参考にまとめました。